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仮想通貨によるフェアトレード。欧米の生協は一歩先をいく

編集者:バチー

1 2016協同組合国際サミット〜世界の生協が集まる国際会議

 2016年9月、ケベック州モントリオールにてカナダのデジャルダン金融協同組合と世界協同組合同盟が主催で「2016協同組合国際サミット」が開かれた。世界中の生協関係者、経済界、NGO、政府関係者、研究者など世界115カ国3000人が参加した。世界中の生協の取り組みやノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツによる基調講演が行われた。このサミットでは、生協のブロックチェーンの活用についても話し合われた。

2 生協と仮想通貨の活用

 仮想通貨と聞くとまだまだ日本では、ビットコインの投機というイメージや金融機関の決済方法や送金方法の議論というイメージが強い。

 しかし、欧米では一歩先行し、いかに「ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨を使って公正な社会を作るか?」という議論が生協や市民団体などの市民セクターで真剣に議論が行われている。フェアトレードに仮想通貨を用いて世界中の生産者、消費者を守るというプロジェクトがイギリスで始まった。また、ブロックチェーンを用いて生産、流通、生協の店舗になるまでの過程を洗いざらい証明するプロジェクトもある。今回は、仮想通貨を用いたフェアトレードを特集する。

3フェアトレードと仮想通貨

 仮想通貨では、世界中、先進国も発展途上国問わず同じ価値の通過で決済が行われる。ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨では、中央銀行にあたる機能がないため通貨の価値が恣意的に決められることがないからだ。

 その点に着目しイギリスの生協では、生産者と生協との農産物の取引、生協と消費者の取引を仮想通貨を用いて実施するプロジェクトが始まった。バナナ、チョコレート、コーヒーなどの商品で仮想通貨を用いた取引を行なっている。仮想通貨を使うことのメリットは以下の点にある。

①生産者は、どの国で生産しようとその国の通貨の価値に関わらず、同じ農産物を同じ量生産すれば同 

 じ額の収入が得られる。

②発展途上国の農民は、極端に安いレートの通貨で買い叩かれることなく生産物を市場で販売するこ

 とができる。

③逆に先進国の農民は、極端に安いレートの通貨で輸出された農産物と競合しなくて済む。

④ブロックチェーンによって、どこの農産物がどこで生産され、どこで流通されたかが偽造されること

 なく証明できる。

⑤④に関連し、不当な搾取や児童労働が行われた農場で生産されたかどうかをブロックチェーンを用  

  いて確認することができる。

⑥消費者は、ブロックチェーンによって安全性を確認することが出来る。

 実は、ブロックチェーン技術を用いた通貨は、生協と相性が良いのだ。多くの生協が、適正な価格で安全な商品が売買されることを通じて消費者と生産者が共にメリットを享受できる社会づくりを目標としている。同じ価値観・未来を目指す消費者と生産者がその象徴・手段として仮想通貨を活用するのだ。

 特に上述のバナナやチョコレートは、アフリカや南米から輸入されるが、その際のプランテーションにおける過酷な児童労働や不当に安い値段で売買されているという批判が常にある。そうした問題を解決する起爆剤として、仮想通貨を用い始めているのだ。ブロックチェーン技術を使った仮想通貨によって、世界規模でフェアで健康的な商取引が行われる未来をイギリスをはじめとする欧米の生協は目指している。