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経済は"愛"と"共感"で出来ている

投稿者:千葉

(1)人類に備わるオキシトシンとテストステロン

オキシトシンは、他者に共感し信頼を育むホルモンである。テストステロンは、攻撃的で処罰しようとするホルモンである。

人間は、この2つのホルモンバランスを保つことで精神状態を安定させ、過剰に信頼しすぎたり、攻撃的になることを抑えている。

今までの経済学では、人間はテストステロン的な合理的利己主義でできていると定義し、ゼロサムゲームをしてきた。つまり、誰もが自分の利益を念頭に置き、一体どこにその利益があるかという打算に基づいて意思決定をすることを前提とした経済学だった。

面白いことに、経済学や経営学に触れたことはある人なら一度は聞いたことがあるであろうアダム・スミスは、道徳感情論の中でこのように言っていた。

「優しく寛大な行動は、他者への愛着の感覚から生まれ、困っている人を目にすると、「相互同感」という絆(共感)が生まれる」と。

人間は道徳を生まれながらにして持っており、他者への共感こそ世の中を豊かにできると提唱したのがアダム・スミスでだったが、時代的に金儲け主義だったこともあり誤解された解釈が世間に広がった。そのため、今日でも人間は利己主義であることが前提に経済が動いている。

アダムスミスは、利己主義の追求は現に全ての人に有益であると主張していた。

例えば、皇帝ペンギンのオスは我が子の卵を温めるために集団で身を寄せ合う。しかし、外縁部にいるペンギンと中心部にいるペンギンでは温度が違う。(もちろん中心の方が居心地がいい)そのため、お互いに外縁部と中心部の場所をローテーションして交代しながら過ごしている。

つまり、各自の利益と全体の利益を一体化し、善循環を生み出しているということだ。これは人間も同じで、一人では生きていけないことを意味する。他者を幸福にすることが自らの生存に欠かせないのだ。だから、人間は道徳的な動物であって、決して合理的利己主義ではないのだ。

テストステロンが過剰になり、暴走すると攻撃的になってしまうので良くないが、ある程度持っていないと人を信頼し過ぎたりリスクにチャレンジすることができなくなる。

多くの人にとって身近な例で言えば、結婚だ。なぜなら結婚は、大きなリスクを伴う決断だからだ。もし、テストステロンがなければ、結婚するという選択はできないだろう。そのリスクに挑戦しようとできないからだ。

なので、決してテストステロンが悪いというわけではなく、何事もバランスが大事であるということだ。

(2)オキシトシンを増やす

では、どうやってオキシトシンの分泌を増やせばいいのか。

オキシトシンは、1日8回ハグをすれば今よりもっと幸せを感じられるようになる。オキシトシンは、ハグした二人共に分泌されるためハグが優しさの好循環を生み出す。

また、複数人でダンスをすることもオキシトシンを分泌させる。

現代で言えば、好きな人とSNSでチャットをするだけでもオキシトシンは分泌される。もちろん、優しい心配りや親切な行動は、した人にもされた人にもオキシトシンを分泌し、他人に思いやりのある行動を促す。

昔からの「自分がやってほしいことを他人にしなさい」という教えは正しいということだ。

(3)共感に基づく経済

筆者は、より人間らしい「他者への共感」「他者との信頼関係」によって育まれる経済を目指したいと思っている。

なぜなら、その方が「幸せ」に生きられるからだ。

何を持って幸せと言うのかは人それぞれですが、筆者にとっての幸せは、"共感"と"信頼"が満たされた状態である。 

共通の話題で盛り上がれる人とは、何時間でも話し合えるため、その数時間で信頼が構築される。

信頼関係は、人と人が強い絆で結ばれ互いを思いやる関係性だ。

そして、インタネットによってこの共感と信頼は拡大している。

この共感と信頼は、人それぞれ太さや深さが異なり、一概には判断できない。

そこで異論を唱えたいのが、「評価経済」へ向かおうとする流れである。

筆者は、評価経済を解にするのはちょっと違うのではないかと考えている。社会関係資本の中にも評判資本というものがあるが、それは一つのパラメーターに過ぎない。(共感経済も究極解ではないが)

評価経済では、他者からのレビュー(評価)が全てです。AirbnbやUber、食べログどれをとってもレビューが書かれている。そのレビューに基づく経済圏が生まれれば、突き抜けている人は、世間では叩かれ、レビューで悪いことを書かれる恐れがあるので、下手なことはしなくなる。

そのため、平均的で当たり障りのない人の経済圏が形成され、なんの面白みもない世の中になるのではないかと懸念している。

共感経済は、社会関係資本(知識資本、関係資本、信頼資本、評判資本、文化資本、自然資本、信用資本など)の多様なパラメーターで形成されている。

共感経済では、個人それぞれの価値観や世界観で関係性が生まれ、信頼を高め合い、互いの評判で共通価値観の人たちがつながり合うことでコミュニティが生まれ、それが文化となっていく。

このような共感経済では、より多様な指標で互いを認め合い、価値を創出し交換し合う経済が生まれるのではないかと考えている。

何より、愛と共感と信頼によって人間が人間らしく人生を歩んでいけるのではないか。